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連載

Lifestyle with Professionals.


vol.4

空間を仕切る理由。

驚きや発見に「であう」、やがて自分の暮らしに「にあう」。 そんなブランドのメッセージや世界観を表現するために 〈niko and ...〉のショップはどのように作られているのか? チーフスペシャリストVMDディレクター・魚住岳寿が語るカッコよくて、ワクワクするお店の作り方。

巨大セットをショップへ。

2015年秋冬シーズン。モデルの竹下玲奈さんを主人公にした『それでも、わたし。』というキャンペーンムービーの撮影がありました。その撮影後の会議で、ムービーに登場するセットをそのまま捨てるのはもったいない。ビジュアルとリアルショップのイメージを連動させるためにも、セットをショップでもディスプレイとして使おうという話になりました。

ムービーで象徴的に使われたレンガのアーチ型のセットは、横幅5m、高さ3m、そして奥行きが1mもある巨大なもの。「niko and ... TOKYO」のショップに置くにはとても大きく、まずどうやってお店に運び込むか、そして、どうやって置くべきなのかとずいぶん悩みました。ムービーとWEB、そして店舗との連動をわかりやすく伝えるには、どうディスプレイするべきか? どうしたら、インスタ映えするようにフォトジェニックにできるか? などなど。

ムービーセットをカットして東京店の店内に。無くなるとやはり寂しい。

いろいろ頭を悩ませた結果、ショップの入り口から入らないアーチは半分にカット。ウィメンズ売場のファサードとしてだけでなく、売り場とカフェスペースをゆるやかに仕切るパーテーションとしても機能させることで、同じショップにいながら、お客さまの気持ちのモードが切り替えられるようレイアウトしました。結果、このアーチのおかげでショッピングを楽しむお客さまには、キャンペーンの世界観を感じてもらい、カフェでコーヒーを飲むお客さまには、ゆっくりと寛いでもらえる空間を作ることができました。

建築資材の足場をシェルフに。

わかってはいたのですが、キャンペーンの終了とともにアーチが撤収される時がやってきました。やはり、いざ無くなってみるとものすごく寂しい。約4ヶ月もの間、店内でアイコン的な役割を果たしていたわけですから、無くなった後のインパクトは予想していた以上のものがありました。何もしなくても、それはそれとして、日々、お店は続いていくわけですが、以前よりカフェも寛げる空間になったわけですし、このままにしておくわけにはいかない。そう思って、次のアイデアを早速考え始めました。

ポイントは以下の3点。
1.アパレルとカフェを仕切る。
2.仕切られているけど、仕切られ過ぎてない抜け感があること。
3.素材は鉄や木、モルタルなど無機質なブランドに合う素材。

建築現場から得たインスピレーションをDIYでショップの什器に。

そんなとき、偶然マンションの外壁工事の現場に遭遇しました。外壁工事の足場を組む時におそらく邪魔になっていたのでしょう。鉢植が仮設シェルフのように組まれた足場の棚に無造作に置かれた光景を見た瞬間、「あ、これだ!」と、ひらめきました。メタル素材の無機質な足場。抜け感もあるし、シェルフにもなる。いざとなれば、商品陳列棚でも使えそう。早速、家に帰ってイメージスケッチを描き、資材を調達。レンガアーチが撤収されてすぐに、足場シェルフを組み立てました。余談ですが、実はこの日は朝から大雪。氷点下の中、作業したことを思い出しました(笑)


現在の「niko and ... TOKYO」店内。売り場を仕切りながらも、抜けを確保して居心地のいい空間に。

完成したシェルフは写真の通り。入口からの圧迫感があまり出過ぎないように手前のシェルフを低く、奥のシェルフは迫力が出るように高くすることで高低差をつけ、足場のメタル板には、木板を敷きました。鉄ということもあり、足場板にそのまま商品を置くと、どうしても鉄の素材感が強く出過ぎて、冷たくなり過ぎてしまう。カフェや売り場との調和を考え、木という柔らかい素材を加えることでまとまりある空間を目指しました。ただ仕切るのではなく、お客さまの視点に立って物事を考え始めると、どうしても細部までひと手間かけてしまいたくなるんです(笑)。マンションの外装工事との偶然の出会いから生まれた足場シェルフ。鉄とグリーンに囲まれたこの什器は、今もそのまま「niko and ... TOKYO」のショップで活躍しています。