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Lifestyle with Professionals.


vol.5

箱の中の「ハコ」。前編

驚きや発見に「であう」、やがて自分の暮らしに「にあう」。 そんなブランドのメッセージや世界観を表現するために 〈niko and ...〉のショップはどのように作られているのか? チーフスペシャリストVMDディレクター・魚住岳寿が語るカッコよくて、ワクワクするお店の作り方。

はじめての「ハコ」。

いまでは当たり前のように「niko and ... TOKYO」の店内に作っているポップアップ・ブース。ショップという大きな「箱」の中に特集のテーマに合わせた、小さな「ハコ」をはじめて自分たちでデザインし、DIYで作り始めるようになったのは、2015年2月のことです。

「#2 BREAKFAST & JOURNEY」の店内。この特集をきっかけに「ハコ」が生まれた。

特集「#2 BREAKFAST & JOURNEY」がそのきっかけでした。この特集の目玉は、“旅と朝食”をテーマにした〈The Tastemakers & Co.(ザ テイストメイカーズ アンド コー)〉とのコラボレーショングッズ「The MILES (ザ マイルズ)」。旗艦店である東京店では、このオリジナルグッズに加え、〈The Tastemakers & Co.〉のホットチョコレートやオランダ発ナチュラルオーガニックスープ、愛知県瀬戸市の〈stadio' M(スタジオ エム)〉の食器なども加えて売り場を膨らませることになりました。

通常〈niko and ...〉のショップでは、平台と呼ばれるテーブルで、テーマ商品の打ち出しを行います。この時もショップにあるさまざまなサイズのテーブルを動かしたり、組み合わせたりしながら、「あーでもない、こーでもない」と売り場の構成を考えていたのですが、どうしても納得のいくイメージに辿り着けません。主役であるオリジナルグッズ「MILES」を立たせながら、朝食のシーンもイメージできる売り場を作りたい。だけど、いくらテーブルを動かしても全然しっくりこなかったんです。

「ハコ」という考えから、店内に小屋を作ることに。売り場を立体的にすることで、驚きのある空間を目指した。

そんな風に悶々と試行錯誤しているうちに、あるアイデアがひらめきました。「朝食」、「スープ」、「家」…。そうか、「家だ!」。朝起きて、おいしいスープがテーブルに並ぶ食卓。そんなシーンが思い浮かぶ、あたたかみのある小屋を作ろうと思い立ちました。背の高い三角屋根の小屋があって、テーブルがあって、棚には食器が並んでいる。そんな空間がショップにあったら、おもしろいんじゃないか! 平面でなく、小屋という立体的な「ハコ」を作る道筋が見えたことで、ようやくディスプレイの糸口が見つかりました。

高さやサイズ、商品、そして導線。売り場としての機能も考え、棚の奥行きや厚みも調整。ラックも設置するなど、あらゆる角度から考えて小屋をデザインしました。また、小屋を入口に向けて少し斜めに建てることで、お客さまが中に入りやすいようにし、2階へと続く階段を昇り降りするお客様からの見え方も考えて、小屋自体のサイズも決めました。

無事、小屋も完成し、イベントが始まるとお客さまから「ここに住める」といった嬉しい言葉をいただけたり、椅子に座って朝食のイメージを体感してもらえたり、お客さまの滞在時間が伸びるなど、通常のテーブル展開での打ち出しと違って、特集の世界観を楽しんでもらうことができました。

カタチを変えていろいろな「ハコ」。

次に「ハコ」を作ったのは、「#3 niko and ... 25人がみつけた MADE IN JAPAN」という特集のとき。タイトル通り25人の〈niko and ...〉のスタッフが、それぞれ思い思いに日本各地から見つけてきたメイド・イン・ジャパンの良品を紹介するという特集です。当然のことながら、メーカーごとにいろいろな商品ラインナップがあって、売り場としての展開規模もさまざま。これだけのメーカー数の商品をただテーブルに並べるだけでは、バイヤーの想いも商品のよさもお客さまには伝わりません。

何もないところからDIYで小屋を作り上げる。今ではすっかり定番的な手法に。

そこで、思い切って1階の売場全体を特集テーマに沿った商品で埋め尽くし、ショップの雰囲気自体がガラッと変わって見えるよう、ドラスティックな演出を施すことに。というわけで、今回は大きく取り扱う4つのメーカー用に、4つの「ハコ」を新たに作ることにしました。

とはいえ、単純に同じカタチの「ハコ」を作ってもおもしろみがありません。そして、何より展開商品の特色を出すことが重要です。と、なると、やはりひと手間かけなければ。そんな思いで作った大きさも意匠も全部バラバラの4つの「ハコ」をショップの入口ひとつ、真ん中にふたつ、そして店の奥にひとつといった具合にランダムに配置。その代わり、共通のビジュアルタペストリーを取り付け、統一感を出すとともに、どんな売り場なのかすぐにわかってもらえるようサインとしても機能させることにしました。

「#3 niko and ... 25人がみつけた MADE IN JAPAN」の模様。個性豊かな4つの小屋で空間にリズムが生まれた。

結果、単調なカタチの繰り返しにしなかったことで、お客さまが小屋を回遊してくれただけでなく、小屋と小屋の動線上のテーブルや壁面で打ち出した商品にも、足を止めてもらうことができました。売り場の中に、世界観を作ってくれる木製フレームの「ハコ」。この特集を通じて、「箱」の中に「ハコ」を作るというアイデアの手応えを実感として得ることができました。以来、「ハコ」は、カタチを変えてショップに登場し、「niko and ... TOKYO」のVMDのベースとなっていったんです。

(後編に続く)