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連載

Lifestyle with Professionals.


vol.6

箱の中の「ハコ」。後編

驚きや発見に「であう」、やがて自分の暮らしに「にあう」。 そんなブランドのメッセージや世界観を表現するために 〈niko and ...〉のショップはどのように作られているのか? チーフスペシャリストVMDディレクター・魚住岳寿が語るカッコよくて、ワクワクするお店の作り方。

アレンジで変化。素材感で進化する「ハコ」。

前編では、お客さまに商品のよさが伝わるように、独立した「ハコ」(空間ブース)を作ることで、買いやすさとおもしろさ、そして世界観を楽しんでもらえるような売り場作りを心がけているというお話をさせてもらいました。後編では、アレンジを加えたいろいろな「ハコ」作りのお話をしたいと思います。

まず、「ハコ」を作るときに大切にしているのは、素材選び。連載のvol.1でも少し触れましたが、鉄と木に代表される冷たさとあたたかさといった〈niko and ...〉がブランドとして大切にしている、相反する素材感の組み合わせは常に意識しています。加えて、特集テーマや商品との相性も考え、さらにその空間がおもしろくなるようイメージを膨らませながら、空間をデザインするようにしています。

特集に合わせて制作してきたさまざまな「ハコ」。同じ素材を使いながらも、アレンジ次第で異なる表情に。

たとえば、フェイクグリーンを主役に「ハコ」を作った時は、チーク塗装でフレームを引き締まった色に塗り替え、グリーンを上から垂らせるように天井に届くほどの迫力のある背の高い櫓(やぐら)を作りました。また、キャラクターグッズを展開した時は、キャラクターの口からブース内に入って買い物できたらおもしろいのではないかと考え、巨大なハレパネをつなぎ合わせてキャラクターの顔を作りました。

自然がテーマの特集では、格子状の天井から白樺の木を吊るすことでショップに林を作り、生花と古着をフィーチャーした特集の際は、工事現場に力強く咲く花を装飾の裏テーマに、古着と相性の良い錆止めのブルー塗装をした短管パイプを不規則に組み、広がりの感じられる空間を作りました。余談ですが、アクセントとして効かせたオレンジの紐は、工事現場の荷物運び用のラチェットベルトです。

「ハコ」の進化系とも言える、海の家と売店。下の2枚の写真は、海の家を作るときに参考にした湘南の海の家の写真。

こんな風に素材とデザインをアレンジしながら、お客さまに新鮮な体験をしてもらえるような「ハコ」を試行錯誤しながら作ってきたわけですが、そのうち木枠のフレームだけでは飽き足らず、よりリアルな「ハコ」も作るようになりました。

夏をテーマにした特集をやることになった時は、どうせならお店に海の家を作ろうと思い、実際に湘南の海の家を巡り、キーになる素材やデザインの要素を持ち帰って、小さな白い海の家を作りました。また、NY特集(前編後編)の際は、現地のキオスクをインスピレーションソースに、小屋に庇(ひさし)を付けて、真っ赤な売店を作りました。

なぜ、そこまでするのか? よくそう聞かれたりするのですが、それは、商品だけでなく、ワクワクするような楽しい体験を持ち帰ってもらいたいからに他なりません。商品に付加価値をいかに付けられるか、それがお店の役割として大切なのではないかと思っています。

出会うべくして出会った「ハコ」。

ちなみに、これまでの「ハコ」は、基本的に木材と鉄をベースに、材料を使い回しアレンジを加えて作ってきました。そろそろ何か違う素材で空間を作ってみたいなと思っていたところ、偶然とある展示会で強化ダンボールを使った大きな家に出会いました。見た瞬間に「これだ!」と思いました。木や鉄にはない、柔らかさと質感と色味。昔から親しまれているダンボールという素材を使いながらも、モダンなデザインに好感を持ちました。これなら、ブランドのイメージを崩すことなく、新しい挑戦ができるかもしれない。はやる気持ちを抑えながら、来たるべき特集テーマがやってくるまで、アイデアを温めておくことにしました。

最新作となるダンボールの「ハコ」の施工風景。軽さのある素材感が特集テーマとマッチした。

そして、ついに時がきました。先日まで「niko and ... TOKYO」で行なっていた特集「#22 BARND NEW LIFE! ニコアンドファニチャー&サプライが選んだ新生活に欲しいもの」で、はじめてこのダンボールの家を什器として使うことにしました。もちろん、ただ家を作って終わりではありません。小屋の中に商品を陳列するための棚は、ダンボールとの相性や商品の性格を考えながら、自分たちでデザインし施工しました。しかも、タイミングのいいことに、別のルートで木製の単管パイプを扱うメーカーを紹介していただけたことで、いままでの鉄と木といった重い組み合わせから、強化ダンボールと木単管という軽さのある素材感にシフトチェンジすることができ、これまでとは違う新しい「ハコ」が完成しました。


完成したダンボールの「ハコ」。ダンボールの柱のモジュールに合わせて制作した木の什器にもコダワリが満載。

もしかしたら、こうしたこだわりは作り手のエゴなのかもしれません。しかし、僕らの仕事は単に商品をテーブルに並べることではありません。商品ひとつひとつの魅力を最大限に引き出せるよう売り場を編集し、テーマに合わせた空間を作ることで、お客さまにワクワクしてもらいたい。そこに販売スタッフの接客が加わることで、はじめてお客さまに商品以上の付加価値を提供できるのではないでしょうか。そんなことを考えながら、今日も僕らはせっせと新しい「ハコ」を作り続けています。