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連載

Lifestyle with Professionals.


vol.7

「面の見え方を工夫する」。前編

驚きや発見に「であう」、やがて自分の暮らしに「にあう」。 そんなブランドのメッセージや世界観を表現するために 〈niko and ...〉のショップはどのように作られているのか? チーフスペシャリストVMDディレクター・魚住岳寿が語るカッコよくて、ワクワクするお店の作り方。

「面」としての強さを意識するということ。

前回は、独立した空間ブースを作ることで、買いやすさと楽しさを感じてもらえるよう、売場作りをしている話をしました。今回は既存の内装に対し、テーマに合わせてその都度変化させてきた「面の見え方」についてのお話です。

オープン当初、「niko and ... TOKYO」は1階に生活雑貨、2階にアパレルという構成でした。階段を上がると右手にはウィメンズの売場が広がり、左手にあるグリーンコーナーの手前には、古材を使った長い一枚板のシェルフがあり、そこでは服飾雑貨を展開していました。



上はオープン当初、2階のグリーンのコーナーの手前にあった服飾雑貨コーナーの様子。下はリニューアルに際し、商品を撤去した後の売り場。

しかし、ある企画がきっかけとなり、アパレルを1階に下ろし、2階に生活雑貨や家具売場を移動させて、ショップの構成をリニューアルする話が持ち上がりました。そして、使える場所は既存のままの什器を使い、必要に応じて一部改装することとなりました。部分的な改装は施したものの、もともとの場所で扱っていた商品を想定して、売り場が設計されていたので、新しい商品を展開するにあたり、頭を悩まされる場所も多々ありました。そのうちのひとつが、先に書いた2階の服飾雑貨の跡地でした。

据え付けられた棚に、シューズやバッグを展開するには、ちょうど良かったのですが、形や大きさの違う雑貨を展開するのには適していません。古材の棚の存在感が強く、そのままだとお客さまに変わった印象を与えるのも難しそうです。そのまま、横一列に整然と雑貨を並べる手もなくはないのですが、メリハリがつかず商品の良さが伝わりそうにも思えない。加えて小さな商品は棚板の余白に負けてしまい、きっと寂しく見えてしまう。どうしたら、面としての強さが出せるだろう? そこで思いついたのが、仕切り板を等間隔で棚に取り付けるというアイデアでした。



生まれ変わった服飾雑貨コーナー。棚に仕切り板をグルーガンで等間隔に設置し、棚板を極力キズ付けないようビス打ちせずに固定した。

結果、仕切り板を入れたことで、商品のテーマ性が伝わりやすくなり、ひとつひとつの商品とキチンと向き合える棚になりました。区画全体の見え方としても、このアイデアのおかげでテーブル什器と壁面との関係性にメリハリがついたような気がします。面を意識して、ひと手間かけたことで、物量の割にすっきりと商品が見やすい売り場が作れたかなと思っています。

棚を壁で隠し、新たな「面」をつくる。

続いては、2階の同じ場所で展開したD.I.Y.ショップ「toolbox」のポップアップコーナーを作ったときのお話です。「toolbox」は、もともと2010年に「R不動産」の兄弟サイトとしてスタートしたサイト。原宿にショールームも構え、ドアノブから床材、そしてキッチンをはじめとする水回りのパーツまでD.I.Y.に必要な道具やアイデアを提案しているショップです。そんな彼らの商品をただ単に棚に並べるだけでは、当然のことながら商品の使い方を見せる場所も世界観を表現することもできません。


「toolbox」のポップアップショップの施工風景。合板を張り合わせ、コの字型に壁を設置し、しまりが出るように黒板塗装。もちろん、スタッフの手ですべて行った。


完成した「toolbox」の売り場。ここまでくると、もはや当初の服飾雑貨コーナーの面影はない。

そこでいろいろと考えた末に、思い切って棚を隠し壁を作るアイデアを思いつきました。もちろん自分たちでD.I.Y.しました(笑)。今まで棚として使われていた場所を壁で隠し、壁面自体を黒板塗装。面ができることで、商品とのコントラストが生まれ、木製のパーツや色目のある商品を浮かび上がらせることができました。そして、何よりお客さまに使い方のイメージが伝わる売り場にすることができたのが、いちばんの収穫だったと思います。

世界観を伝えるための面の見せ方。

バックパックやアウトドアギアを扱う「UNBY GENERAL GOODS STORE」のポップアップイベントの際には、棚の前に立てる壁をすべて有孔ボードにすることにしました。彼らのモノ作りのコンセプトは、“人もかばんも中身が大事”。その思いをしっかりと伝えるためには、まずはそのバッグをキチンと見せられる売り場にしなくてはなりません。そして、できれば彼らのブランドイメージをできるだけ崩さないようにしようと思い、彼らの路面店のレジ裏の壁面と可能な限り色を近づけて塗装しました。



「UNBY GENERAL GOODS STORE」のポップアップイベントの施工の様子。有孔ボードの色を同店とできるだけ揃えるようにし、商品テーマを分かりやすくするため壁に仕切りを入れた。

最初にお話した通り、この場所はもともと棚があった場所です。いまとなっては当初の売り場を覚えている人の方が少ないかもしれません。僕の仕事として何より大切なのは、商品の素晴らしさやブランドの世界観をより分かりやすく届けること。その上でお客さまを飽きさせることなく、新しい出合いと発見を持ち帰ってもらいたい。そのために、テーマに合わせて面の構造を変え、チューニングをしながら、今日もせっせと施工に励んでいます(笑)。


完成した売り場の写真。

話は変わりますが、先日2年ぶりに「UNBY GENERAL GOODS STORE」のポップアップイベントを開催しました。前回の経験を生かして、今回は有孔ボードにさらに棚を取り付けました。縦軸の仕切りに加え、棚板によって横軸ができたことで、また面の見え方が変わったと思います。どこまでいっても、終わりのない面作り。面の見え方を意識し、工夫を凝らすことで、つねに新鮮な売り場が作れたらと考えています。


2年ぶりに行った「UNBY GENERAL GOODS STORE」のポップアップコーナー。新たに棚を設置し、バージョンアップを施した。