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連載

Lifestyle with Professionals.


vol.9

「たまごの話」。前編

驚きや発見に「であう」、やがて自分の暮らしに「にあう」。 そんなブランドのメッセージや世界観を表現するために 〈niko and ...〉のショップはどのように作られているのか? チーフスペシャリストVMDディレクター・魚住岳寿が語るカッコよくて、ワクワクするお店の作り方。

前回までは、ブランドが売場作りで大切にしていることや、商品を陳列する前のD.I.Y.でやっている“ひと手間”についてお話してきました。今回は実際に商品をディスプレイするにあたり、どのような考えとプロセスを経て売り場を作っているのかを、「たまごの話」を例にして、具体的にお話していこうと思います。何も置かれていないテーブルや棚にどういった手順で商品を陳列していくのか? 形や素材に先入観のない発泡材を使い、見せたいものを「たまご」と仮定して、実際に陳列していこうと思います。

1.全体のイメージを考える。

何もないところに何を置く?

背の高い商品は後ろ。

暗い色と明るい色の組み合わせで
お互いを引き立てさせる。

商品を陳列するとき、はじめに考えることは「見せたいものを、どこにどれくらいの量や面積で展開するか」ということ。その後、それに伴う他の商品との全体のバランスを考えていき、商品の見え方、色の効果、大きさ、お客さまの手の取りやすさ、全体としての見え方などを考えて、イメージができたら並べていきます。まずは基本に忠実に、真っ直ぐ見やすく分かりやすく、背の高い商品は後ろ。そして棚陳列のベースとなる大きな商品から並べてバランスを取っていきます。色の効果を利用すると同じ商品でも見やすくなり、また暗い色と明るい色を組み合わせることで、お互いの商品を引き立てることができます。

2.見せたいものの場所を決める。

背の低い商品は手前、
背の高い商品は後ろ。

売りたいものは見やすい場所に、
手に取りやすい場所に。

ここが見やすく、
手に取りやすい場所。

陳列の基本は、左は低く、右は高く。背の低い商品は手前、背の高い商品は後ろ。小さな商品は上の棚、大きな商品は下の棚。その中でも特に売りたいものは見えやすく、手に取りやすい場所に。「たまご」を見せたいものと仮定してどこに置くかを考えます。

この棚でいちばん見やすく手に取りやすい場所は、床面から120cm前後の写真の場所。次に見せたいものがどれくらいの物量があれば、お客さまの目に入るかを考えます。いい場所に置いても、少ししか展開しないとなるとお客さまの目には入りません。量が決まれば、下手にディスプレイをしないで、まずはシンプルに見やすく分かりやすく買いやすく。真っ直ぐていねいに陳列していきます。

3.関連商品を陳列する。

ひとつひとつ考えて、
意味を持って並べよう

たまごを食べるための
お皿を置こう。

小さな商品は上に。
大きな商品は下に。

次に「たまご」に関連する商品を置いていきます。ひとつひとつ考えながら、意味と関わりを持たすように陳列。「たまご」を食べるために必要なお皿は下の棚に。塩と胡椒は上の棚に。他にも関連する商品をいろいろと並べてみましょう。繰り返しになりますが、大きな商品は下に、小さな商品は上に。見やすく、分かりやすく、買いやすく、手に取りやすくが基本です。

4.見せたいものをグルーピング。

「たまご」の種類は2種類。同じ「たまご」をグルーピングしていきます。小さな「たまご」は¥150と¥200。比較的買いやすい価格です。大きな「たまご」は¥5000と¥6000。少し手が届きにくい価格。でも、とても素敵な「たまご」です。そこで、価格に合った陳列をしていきます。小さな「たまご」は、価格も手頃なので大きな入れ物にザクザクと。価格の高い大きな「たまご」はたくさん出さずに整然と置いていき、価格に合わせて陳列量に差をつけます。

次に売りたいものがお客さまの目に飛び込むようなアイデアを考えます。例えば、写真のように額縁の上に置いてみる。平面的な棚からあえて飛び出させることで、静的な棚に動的なリズムが生まれました。

5.全体感を調整する。

額縁も買えるように
陳列しよう。

整然と猥雑の組み合わせで
リズムを整えよう。

全体のバランスを考えて
面白みの演出をする。

最後に全体感の調整です。「たまご」を魅力的に見せるように使った商品も買えるようにディスプレイ。整然とした場所とゴチャゴチャとした場所、互いを組み合わせながら棚全体のリズムを整えていきます。最後の仕上げに、遠くから見てお客さまの興味が湧くよう、高さを出して全体感にインパクトを加えていきます。

6.たまごを見せるための棚、完成。

最上部へ椅子を置くなど、
高さをつけてインパクトを出す。

難しければ、シンプルに
真っ直ぐ並べるだけでも
商品は見せられる。

何もない棚からはじまり、全体のイメージを考えて、見せたいものの場所を決め、関連商品を陳列し、グルーピング、価格に合わせた量の調整、そして魅力付けと全体感を調整する。このような一連の流れで棚の陳列は終了します。それでは、この基本の考え方を元に作った実際の売場を見てみましょう。

7.実際の売場での事例。

この棚で見せたかったのは、漆塗りの汁椀。まず、主役である汁椀を左の棚の上から2段目(120cm前後)に陳列することにしました。なぜ、2台並べた什器の左側に汁椀を置いたのか? それは、人の目線が左から右、上から下に流れるからです。売りたいものは左からと書きましたが、棚全体のバランスを考えると、中央寄りに配置することでより目立つようになります。汁椀の周囲にはグラスやカトラリー、アルミ皿をディスプレイ。シルバーと茶色の塊のバランスを取りながら陳列することで、色が散らばり過ぎずまとまりが生まれるんです。ディスプレイでは、什器を含めて色を使い過ぎないことも大切。この棚の場合、シルバーとブラウンをベースに植物をアクセントとして効かせています。

次の事例は、面積が大きな棚のケースです。1枚目の写真は、色展開のある鉄素材のアイテムが主役。色で分類して、スッキリと陳列する方法もありますが、商品の選びやすさを優先してあえてアイテムごとに並べました。商品が棚の素材や色と相反する組み合わせなので、それだけで見せたいものが際立ちます。2枚目の写真はナチュラルなカラーと素材感のアイテムが主役の場合。1枚目とは違い、棚の色と近い商品群なので、アイテムのグルーピングと大きさを考えた上で、ある程度色のまとまりを意識すると、スッキリ見やすく陳列することが可能です。同じ棚でも、陳列のポイントを変えるだけで、世界観がガラッと変わります。

最後はオープン当初の「niko and ... TOKYO」の写真です。棚のスケール、素材、色が変わっても、基本的な考え方は一緒です。見せたいものを明確にし、グルーピングし、見やすく、分かりやすく、買いやすく。そして、空間として迫力とおもしろみがあり、ショップでしか体感できない売場を作れているか? ディスプレイでいちばん大切なことは、お客さまに興味を持っていただき、「これが欲しい! 」と思ってもらうこと。

今回は、ショップで日々行っている棚のディスプレイの基本的な考え方をお話しました。後編では、テーブルのディスプレイについてのお話をしたいと思います。

今回ご紹介したディスプレイのプロセスを
スライドにまとめてみました。ぜひご覧ください。