ー ムービーで登場した漫画のストーリーは、どのように決まったのですか?

最初に私から「作中に出てくる漫画は、主人公がどんなキャラクターで、どんな話ですか? 」とお聞きしました。監督からはストーリーの詳細や人物設定について回答をもらい、ていねいな絵コンテも一緒にいただきました。

「ビルの上からポトポトおちてきて少女を追うヨパライたち」「少女のまわりの夜がカラスになってとんでいく」…といったように、細かく書かれていたんです。しっかりと完成された世界があったので、私としてはその世界をおもしろがって絵にしていくという感じでしたね。楽しかったです。

ー 完成したムービーをご覧になって、どう思いましたか?

自分が描くべき、漫画の世界観や雰囲気は監督とのやり取りでよくわかったつもりでしたが、自分が描いた漫画が実写と組み合わさってどうなるのかは想像がつきませんでした。「いったいどんな動画になるんだろう」と、本当にドキドキワクワクしていました。私にとっても、完成した姿が未知のまま、自分のパートを仕上げていくことは、とてもチャレンジングでした。

実際に完成品を見たときは、「わー! 動いてる! すごい! 」と(笑)。高校のときに8mmフィルムでアニメをつくったときの興奮を思い出しました。原初的な感動とも言えます。

ー 手を差し伸べる自転車に乗った男の子は、(菅田将暉さん演じる)高木をイメージして描いたのでしょうか? 黒田さんが思う「高木」のイメージはどんな男の子でしょうか。

自転車の男の子は、「高木」の化身ではあると思います。イメージは…うーん、特にモデルはないですが。「夜の世界から帰らないままの少年」という設定を監督からうかがったとき、なぜか伊藤潤二さんの『布製教師』の「呪いで髭の生えた男の子」のビジュアルを思い出しました。子供のままだが不思議な力の影響下で大人びたところがある。なんとなく近いような、違うような…(笑)。まあそれは連想で、実際似てもいないんですけれど。難しいのですがひと言で言うなら、高木=少年です。

ー ムービーの主人公は漫画家ですが、ムービーのなかで漫画家として共感したシーンなどはありますか?

高木が「あ、そうかそうか! 」とヒトリゴトをつぶやきながら自転車で走るところですね。自分でもよくやってるから。自転車だったり歩いてたり、何か関係ない作業の途中だったりしますが、頭の中で思いついたセリフや、ひらめいた展開が、思わず口をついて出ます。すれ違う人から警戒されそうな怪しさがリアルで、「あるある」と思いました。

ー 今回の漫画を描くうえで、難しかったことや悩んだことはありますか?

実は…最初はアニメーションの原画みたいな感じに描こうとしてしまっていたんです。動画の元になるからと考えすぎて。進めていくうちにやっぱりなんか違う、合ってないな、偽物だなと感じて、漫画の一コマのつもりで描くべきだと考え直して今の形になりました。

ー 今回のムービーに使用した漫画は、11月に発売される黒田さんの短編集にも掲載されるそうですね。どのような短編集なのでしょうか。

2011年の東日本大震災の直前から、2018年までに描いたものをメインにした短編集で、いろいろな媒体に描いた作品を集めたものです。時期的なこと以外は、共通したテーマはなく、バラエティに富んでいることが特徴でしょうか。ぜひ、〈niko and ...〉ファンの方にも手にとって、楽しんでもらえたらと思います。

PROFILE
黒田硫黄(くろだいおう)

1993年、講談社月刊アフタヌーン四季賞秋のコンテスト大賞を『蚊』ほか3編で受賞し、デビュー。その後、『大日本天狗党絵詞』『茄子』『あたらしい朝』『アップルシードα』(ともに講談社)『大王』『黒船』(ともにイースト・プレス)など、著作多数。2003年『セクシーボイスアンドロボ』(小学館)で文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞受賞。同年夏に『茄子』の一篇「アンダルシアの夏」を原作にしたアニメ『茄子アンダルシアの夏』が劇場公開された。
「カケル」メイキングも見れる
2018Autumn&Winter 特設サイトはこちら

「カケル」メイキングも見れる
2018Autumn&Winter 特設サイトはこちら