家具も含めてトータルで生活全体を編集できるブランド。

左:和田浩明さん(新日鉄興和不動産)、右:好村有平(〈niko and ...〉BtoB担当)

ー〈ニコアンド〉ではいつ頃からBtoBビジネスに取り組むようになったんですか?

好村:昨年の1月からですね。はじめはリノベーション住宅を手がけました。

ー 今回のマンションも住宅ですが、なぜそこに力を入れるのでしょうか?

好村:〈niko and ...〉はもともと雑貨が中心のブランドで、それを軸にアパレルも含めた生活用品を提案してきました。その上でしっかりと家具もお客さまにお届けしたいという気持ちから、2016年に〈niko and ... FURNITURE&SUPPLY〉を立ち上げたのですが、はじめの2年間はただお店に置いて販売している状態が続いていました。

それをさらに広く伝えて、〈niko and ...〉の新しい魅力に触れていただく機会を増やしたいという気持ちが根底にあります。BtoBを通してこれまで〈niko and ...〉をご存知なかった新しいお客さまにもお届けできると思いますし、家具も含めてトータルで生活全体を編集できるブランドであることを知ってもらいたいです。


「リビオ錦糸町」の模型。〈niko and ...〉の店舗で使用しているモルタルやブリック、そしてスチールといった象徴的な素材を使用して外観を表現している。

ー 今回のマンションでは新日鉄興和不動産さんのほうから〈niko and ...〉へコラボレートの打診をされたそうですが、パートナーにこのブランドを選ばれた理由を教えてください。

和田:いま好村さんが仰っていたように、生活に根ざしたブランドというイメージを私どもも抱いていたからです。小物、アパレル、家具とトータルでやられているブランドはそこまで多くない中で、今回のマンションのコンセプトにすごくフィットしているのではないかと考えました。

弊社ではファミリー向け、単身者向けの都心一等地での高額商品など、いくつかのマンションブランドを展開しているのですが、各ブランドによってしっかりとターゲット層を住み分けしているようで、実は曖昧な部分もあります。たとえば、錦糸町と六本木と世田谷では、そこに住んでいる人たちのライフスタイルはまったく異なると思います。そこへ画一的に同じマンションを建てていいのか? という疑問がありました。

ー つまり、その土地での暮らし方に合わせたマンションを建てるべきだということでしょうか。

和田:そうです。「リビオ錦糸町」は駅からはすこし離れたところにできるのですが、街自体は都心とのアクセスが良好な立地にあります。物価もそこまで高くないですし、経済的にも安心して暮らせる街なのかなと。そうすると、煌びやかなものではなく、自分のライフスタイルにあった“ちょうどいい暮らし”を好まれる方がこの物件にはフィットするんじゃないかなと考えました。そこでそういった「自分らしさを叶える暮らし」をコンセプトと定め〈niko and ...〉さんへお声がけをし、プロジェクトを進めていきました。

好村:前回はリノベーション住宅で、今回は分譲マンション。どこまでできるかという不安はもちろんありましたが、コンセプトも、我々に求められているものも、すごく明確だったのでスムーズにお仕事をすることができましたね。


エントランスはカフェのような居心地のよい空間作りを徹底するため、家具やシェルフなどの小物雑貨は〈niko and ... FURNITURE&SUPPLY〉のアイテムを使用し、BGMの選曲も〈niko and ...〉の店舗をイメージしています。※画像は完成予想CGです。
〈niko and ...〉らしさと住み心地のバランス。

ー 実際にお互いのやりとりはどんなところからスタートしたんですか?

和田:物件の設計がはじまる頃なので、もう最初の最初からですね。エントランスの造形をどうしましょう? というお話からずっと関わってもらってます。

よくある話としては、モデルルームを作るタイミングや、販売をスタートする頃にブランドにお声がけをして、広告戦略を立てることは過去にも実績があります。ただそのタイミングだと、後から入ってきたブランドと物件自体のコンセプトがマッチしないケースもあったりします。だから今回のように最初から〈niko and ...〉さんに入っていただいたのは非常に健全なやり方である一方、すごく稀なケースでもあります。とくに外観までデザインに携わっていただくというのはなかなかないかなと。

ー〈niko and ...〉としてはどんなところにこだわったんですか?

好村:まずはブランドのファンの期待を裏切らないように〈niko and ...〉の色をしっかり出すこと。とはいえそれが濃すぎてしまうと、住み心地や使い勝手の部分が疎かになってしまいます。ここに住まれる方々のこともしっかりと考えて、そのバランスをとることに苦労しました。空間を演出することは日々行っていることですが、住宅設計の領域となると私どもは素人同然です。なので、そこは和田さんと相談しながら進めていきました。

ー 新日鉄興和不動産さんはこだわった部分はあったのでしょうか?

和田:お客さまにお売りするものとしての基準や、マンション設計としてどんな空間にしていくのか、ということを考えました。デザインの部分では、はじめから〈niko and ...〉さんの考えを聞きながら設計を進められたため、いただいたご意見を最大限活かせたかなと思います。好村さんが「設計の領域」と仰ってましたが、その部分ではしっかりとこちらの意見を伝えさせていただきました。

いままでなかった新しい暮らしができるような部屋にしたかった。

ー 具体的なデザインのこだわりについて教えてください。

好村:〈niko and ...〉の店舗に近いムードを出せればお客さまの期待を裏切らないだろうということで、そこをベースに考えました。うちのお店では材料は本物を使うというポリシーがあって、たとえばブリックタイルや無垢の木材を使用するといったことですね。ただ予算の関係もあるので、それを室内でどこまで採用できるかというのが難しかったですね。

和田:基本的には〈niko and ...〉さんのやりたかったことが実現できたと思っています。


キッチンの壁は黒板としても使用でき、チョークで予定などを直接書ける他、マグネットで家族の思い出写真や好きなポストカードなどを飾ることも。

備え付けの棚もカフェやお店のような雰囲気を意識した作りになっています。

ー〈niko and ... FURNITURE&SUPPLY〉との相性も考えられたりしたんですか?

好村:そうですね。色合わせですとか、そういった相性は考えています。

和田:お話を伺うと、お店によって使用している素材が異なるということだったので、ここでお店をオープンさせるならどんなイメージで作るのか? ということを考えながらやっていきました。

好村:先ほども話したように、それに加えて実際に住むこともしっかりと想定して。このエリアで暮らす人たちがどんなライフスタイルを送っているのか? ということをイメージして、それをニコアンド流に編集するような形で作業は進んでいきましたね。

ー 錦糸町に暮らす人たちのライフスタイルというのは、具体的にいうとどんなイメージでしたか?

和田:両国駅とのあいだに「すみだ北斎美術館」があって、墨田区は葛飾北斎なじみの街でもあるんです。生前、北斎がいろんなスタイルに挑戦したように、この街は伝統が根付いている一方で、新しいものを取り入れるマインドもあるのではないか思います。型にはまったものをつくらずに、柔軟な暮らしをしているという印象があって、やはり建物を見ていてもそれぞれ個性があります。その中で、住む人たちが自分らしさを表現できるマンションにしたいという気持ちがありました。

好村:しっかりとした文化的背景があるので、ライフスタイルにこだわりを持った人が住めるようにしたかったというのはありますね。たとえばアートが好きな人が廊下に作品を飾れたり、お気に入りのものを見せる棚を作ったりなど、そういった部分は力を入れました。

明るすぎず、落ち着いたムードのあるキッチン。調理・作業場の背面にあるタイルは一色で表現するのではなく、何色かのグリーン系の色でまとめることで表情のある仕上がり。


洗面台にもネイビーのタイルが。無機質になりがちな洗面台も、色が入ることによって他の家とちがうムードに。

ー 水回りも一般的にはホワイトで統一されているところが多いですが、ネイビーのタイルを使っていてとても新鮮ですね。

好村:明るくて清潔な色として白が一般的なのかもしれないですが、それに飽きている人もいると思います。だから清潔であることは前提としても、白だけが選択肢ではない。キッチンの面材は普通選ばない色にしたり、洗面台のタイルも濃紺のものを選んだりと、常識とは違うことにチャレンジしています。そこを気に入ってもらえたらうれしいです。

リビングの壁面には無垢の木材を張り巡らすことで部屋全体が暖かなムードに。本物の木の材料を使用しているため、安っぽくならないところもポイント。

ー 先ほど話されていたように、壁には木材を使用するなど、一般的ではないのにどこか落ち着いたムードもありますね。

好村:ウッドパネルは分譲マンションではあまり見かけない素材ですよね。そういった部分も我々が携わったからこそ実現できた部分なのかなと思ってます。あと、リビングはテレビを置くスペースを省いたレイアウトでコーディネートしました。最近だとテレビは置かずにタブレットで映画や動画を見る人が多いと思うので、その辺りも新しい住まいのあり方として提案したいですね。

和田:これまで分譲マンションの存在や、そのモデルルームというのは、煌びやかで憧れの詰まった空間だったと思うんです。だけど、実際に住んでみると現実とのギャップがあったりする。この部屋を作るときも、単にかっこいいというだけじゃなくて、リアルに暮らしを想像できるとか、自分らしくいられるという風に、共感して住んでもらいたいという話をしていました。

リビング横にある空間はガラス戸で仕切ることで書斎に。備え付けの棚で自分の好きなものを見せるようにレイアウトし、こだわりの空間に。

和田:家を買うということは、夢を買うことと同義であると捉え、期待できます。でも、あくまで地に足がつきつつ、いままでなかった新しい暮らしができるような家を提案したいという思いがありますね。

〈niko and ...〉と一緒にコラボレートできて勉強になった。

ー おふたりに伺いたいのですが、今回のコラボレートで得られたノウハウや気づきのようなものはありましたか?

好村:〈niko and ...〉としてははじめての試みだったので、すごく大きなものを得られました。店舗を飾ることに関しては経験がありましたが、こうやってマンションのデザインを担当することに対しては未知数だったので、こうして形が見えてくると自分たちのやれることの可能性が広がった感覚があります。

和田:〈niko and ...〉さんと、私たちの場合は、お客さまとの距離感が全然違うんです。私たちは一生に一回の買い物をするお客さまをご案内する一方で、〈niko and ...〉さんは常にいろんな商材を提案していて、お客さまが求める最新のトレンドや好みを早いスピードでキャッチしています。そういった部分でお客さまのニーズの考え方について、すごく勉強させてもらいましたね。

ー 実際にお客さまの反応はいかがですか?

和田:すごくいいです。モデルルームの見学の予約数が伸びていて、いいスタートが切れていると思います。

好村:物件をご覧になられる方の中では、〈niko and ...〉のお店にいらっしゃったことがない方もいると思うんです。その中でこのマンションを通してブランドに共感していただいて、お店にも来ていただけるとすごくうれしいですね。

niko and ... FURNITURE&SUPPLYを通して、人々が過ごす空間を演出する、法人様向けサービスを行っております。