Behind the Scenes. コラボの裏側、かく語りき
OKI KENICHIが描く、
ニコアンド TOKYO 10周年を祝う花。

まもなく生誕10周年を迎えるニコアンドTOKYO。店内にはそんな節目の年を盛り上げるべく展示されているアート作品があるのをご存知でしょうか? 明るいカラーリングで抽象的に描かれた作品。これは、アーティストであるOKI KENICHIさんによるもの。3月から月ごとに展示される作品は変わり、合計8タイトルが制作されました。そして、誕生月を迎える直前の9月末には、OKIさん本人によるライブペイントも行われる予定。ということで、今回はそんなアート作品にまつわるコラボの裏側をお届け。OKIさんの頭の中に広がる世界観を紐解きます。

  • OKI KENICHI

  • アーティスト。人物を変形させることで思考を表現した抽象画、アルファベットを独自の形に変形させた文字作品、 またはその2つを掛け合わせた作品をベースに、立体作品やインスタレーション作品なども発表している。 2014年にはニューヨークへ渡り、Bushwick Open Studiosの参加アーティストに選出され、その後、国内のみならず海外での活動も続けている。 また、アパレルブランドやミュージシャンとのコラボレーションアイテムのデザインも多数手掛ける。
  • 増田太一

  • ニコアンド営業統括。OKIさんにアート制作のオファーをした張本人。運営だけでなく、幅広いカテゴリーで腕を振るう敏腕スタッフ。日夜忙しく駆け回っている。

毎日見るものだからこそ、
鑑賞者を明るく前向きにしたいという気持ちがある。

ー 今回10周年に向けたアート作品をOKIさんが描かれたということで、そもそもどうしてOKIさんに依頼をしたんですか?

増田:10周年を盛り上げたいということで、アーティストとのコラボを企画したんです。記念すべき節目の年ということもあって、はじめましての人よりも、これまでにニコアンドと関わりがあった方とご一緒したかった。OKIさんは台湾にあるニコアンドのお店で、エキシビションを開催されたご縁があるんですよ。ぼく自身もOKIさんの大ファンで、むかし「今度一緒にお仕事がしたいです」と自分の気持ちを綴ったDMを送ったことがあって、それが今回こういう形で実現しました。もう、めちゃくちゃうれしくて(笑)。

OKI:メッセージを頂いて、増田さんがそれを覚えてくださっていたのが単純にうれしかったですね。ただ、その話が10周年に向けたものっていうことで、逆にプレッシャーも感じました(笑)。だって、めちゃくちゃ大事なタイミングじゃないですか、10周年って。だから気合いを入れないとなとも思いましたね。

ーOKIさんのどんなところに惹かれるんですか?

増田:作品にいろんなメッセージを込められているところ。あとはシンプルに描かれるモチーフやカラーリングがかわいい。アルファベットを独自の形で描いているところにも惹かれます。ぼくの自宅でもいろいろ作品を飾っているんですよ。

OKI:ぼくはもともとデッサンが得意ではなくて、見たものを上手に描けなくて。だけど、絵を描くこと自体は大好きなんです。じゃあ、どんな絵がぼくには描けるんだろうっていろいろ考えたんですよ。その結果、“存在しないもの”を描くのが自分には合っているんじゃないかと思い当たりました。アーティストとして食べていくには、やっぱり唯一無二のものが必要で、そうなると抽象的なもののほうが自分は描きやすいんです。

増田:漫画の影響も受けられているんですよね?

OKI:もともと漫画の模写をずっとしていたんです。それで描くことが好きになって。中学のときに教科書に載っていたピカソの『ゲルニカ』っていう作品を見て、「絵って自由でいいんだ」っていう意識が芽生えましたね。その後、地元の福岡にFUTURAというアーティストが来日して会いに行ったんですが、彼の作品を見てアートに興味を持ちました。それで自分でも作品づくりがしたいと思うようになったんです。

ー抽象画って鑑賞者にいろんなイマジネーションを与えると思うんですが、どうやって描いているんだろうっていうシンプルな疑問が浮かびます。

OKI:普段生活を送る上でいろんな人と接しますよね。コミュニケーションの中で気づいたことや、相手が発したことに対して自分が思ったこととか、そうして生まれたアイデアを作品に落とし込んでいますね。だけど、やっぱりそれを作品として形にするのは簡単ではなくて。だからこそ、アートって楽しいんです。自分が思い描いた作品がバシッとできたときの感覚は、もうめちゃくちゃ気持ちよくて。高揚感がありますね。

増田:作品をつくる上で大事にしていることはありますか?

OKI:明るいテーマで描くようにしてますね。アートってお店とか家に飾られるわけじゃないですか。毎日見るものだからこそ、鑑賞者を明るく前向きにしたいという気持ちがあって。

増田:なるほど。ニコアンドTOKYOのために描いてくれた作品も、まさにそうなんですよ。お店のスタッフがすごく気に入ってくれて、働く中であの作品が目に入ると楽しい気持ちになったり、明るくなりますよね。お客さまの中には、あの作品を見てOKIさんを知って、実際にファンになった方もいらっしゃるんです。

OKI:それはすごくうれしいですね。ありがとうございます。

愛と喜びの花を好きな人と
一緒に分かち合いたい。

ー今回のコラボレーションに際して、増田さんはOKIさんにどんなお題を投げられたんですか?

増田:今回は10周年に向けて気持ちがどんどん上向きになるように、3月から10月まで毎月、これまでニコアンドに関わってくださった方々とイベントをしようと決めたんです。そのためのスペシャルサイトもつくることになり、クリスマスにおなじみのアドベントカレンダーみたいに該当月をクリックしたらコンテンツが見られるようにしたら、お客さまもワクワクした気持ちになってくれるんじゃないかと考えました。それに対応するように、OKIさんには3月から10月までの8つの作品の制作を依頼して。あとはもうお任せですね(笑)。OKIさんの作風をそのまま表現してくださいとお伝えしました。

OKI:ぼくは人をモチーフにした作品も描いているんですけど、それは都度テーマが変わるので、統一感を出して8枚を描くのは難しいなと思ったんです。それでお花のシリーズが合うんじゃないかなと思いました。

エレファントカシマシさんの「Easy Go」という曲がぼくは大好きで、歌詞に“21世紀のこの荒野に 愛と喜びの花を咲かせましょう”という一節があるんです。このシリーズは、そこからインスピレーションを得ています。

がむしゃらにがんばって生きていても、報われないときも人生にはあるじゃないですか。長くて暗いトンネルのような道を歩んでいるときにも、せめて愛と喜びの花を好きな人と一緒に分かち合いたいという曲だとぼくは解釈していて。ニコアンドTOKYOは今年10周年という節目を迎えるけど、これからも長い道は続く。そうした姿と「Easy Go」の解釈を重ねて今回の作品を描きました。

増田:すごく素敵ですね。ニコアンドTOKYOって、いろんなひとたちの想いがたくさん詰まってできたお店なんですよ。オープンしたての頃は思うように売上が取れない日々もあったんですけど、45日周期でいろんな企画を考えて、それをずっと続けていたら徐々にお客さまにもよろこんでいただけるようになって。

そうしてお店として成長することができたんですが、コロナ禍になり、本当に苦しい時期が長く続きました。たくさんの人の想いによって生まれたお店だし、お客さまの笑顔ももっと見たい。そうした気持ちを抱きながら、どうにかして乗り越えました。

そうした時期を経て、いまはこの10年の中でいちばんの好調をキープしているんです。それはひとえにご来店いただいているお客さまと、一生懸命働いてくれているスタッフのお陰だと実感しています。本当に感謝していますね。だからOKIさんが仰っていたように、本当に長いトンネルの時期があったんです(笑)。

ー最初に作品をご覧になられたときは、どんな感情が湧いてきましたか?

増田:OKIさんが作品を持参して来社されて、それを全部並べたときに、そこにいたスタッフ全員のテンションが上がったんですよ(笑)。しかも、黒い線で描かれている文字が月の略称であることに気づいて。

OKI:いつもは“LOVE”か“JOY”って描いているんですけどね。

増田:そうですよね。だけど今回はそうじゃないと知って、スタッフ全員がまた「おおお!」ってなって(笑)。ぼくたちのアイデアや想いをしっかりと汲み取って、それを具体化してくださったので、本当に大満足ですね。お店に飾ったときも映えるというのがひと目でわかったので。

OKI:めちゃくちゃ照れますね(笑)。ありがとうございます。

ーおふたりのお気に入りはどの月ですか?

増田:ぼくは6月ですね。自分の誕生月なので。10周年の企画が終わったら、引き取りたいくらいです(笑)。

OKI:ぼくは10月ですね。愛と喜びの花が元気よく咲き誇っている感じをうまく表現できたので。バシッと気に入るやつが描けました。

お客さまに新しい発見や、
ワクワク、ドキドキを届ける。

ー9月末にはニコアンドTOKYOでライブペイントも行われるんですよね。

増田:お店には大きなウィンドウがあって、そこにOKIさんの作品を飾っているんですけど、10月に10歳の誕生日を迎える直前に、そのウィンドウにライブペイントをしてもらいます。それでようやく今回の作品群が完成するというストーリーです。

お店で働くスタッフと、お店づくりに関わるスタッフの10周年に対するひとりひとりのメッセージを、OKIさん独自のフォントデザインで作品としてウィンドウに描いてもらうんです。

OKI:このPOSCAっていうペンで描くんですけど、めちゃくちゃ大きいウィンドウだから大変なんですよ(笑)。

ーライブペイントは普段の作品づくりとは大きく環境が変わりますよね。それによって生まれてくるものも変化があるのでしょうか?

OKI:ぼくはあまり変わらないですね。描く前にある程度完成図が見えているので、それに向かって手を動かすだけなんです。きっと慣れもあるんだと思いますね。話しかけられても手は動かせるっていう不思議な感覚があって。

増田:売り場づくりも似ているところがありますね。頭の中で描いたレイアウトをどれだけ精度を高く具体化できるかなんですよ。商品を並べる前に完成図が頭の中にあって、それに合わせてアイテムを動かしていく。だからOKIさんが仰っていることがよくわかりますね。

OKI:へぇ~! そうなんだ。意外な共通点があっておもしろいですね。東京店ってすごく広いし、ほかのニコアンドのお店とは違う雰囲気がありますよね。スタッフの方々のおすすめや、好きなことがギュッと詰めこまれた印象があって、お店にいるとワクワクします。

ーライブペイントに向けて、いまどんな気持ちでいますか?

OKI:増田さんのお話を聞いて、本当にいろんな方々の特別な想いがあるお店だということを知ったので、みなさんのメッセージをしっかりと作品として昇華できるように、がんばって描きたいと思います。

ー増田さんはこれからのニコアンドTOKYOに対して考えていることはありますか?

増田:お客さまに新しい発見や、ワクワク、ドキドキを届けるという想いはニコアンドTOKYOがオープンした頃からずっと変わっていなくて、これからもそうした気持ちを大切にしたいですね。今回のような節目に限らず常にお客さまに喜んでいただけるように、おもしろい企画をたくさん考えていけたらと思っています。

ニコアンドTOKYO 10周年記念サイト

「OKI KENICHI」ライブイベント

9月28日(土)、29日(日)の2日間、
ニコアンドTOKYO店にてライブペイントを開催します。

開催日:2024年9月28日(土)・9月29日(日)
開催時間:11:00~19:00(予定) ※ペイントの進行によって前後する場合がございます。
展開期間:~2024年12月末
開催店舗:ニコアンドTOKYO
住所:東京都渋谷区神宮前6-12-20 J6FRONT 1F・2F
電話:03-5778-3304
営業時間:11:00〜21:00

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Photo:Yuta Okuyama
Text&Edit:Yuichiro Tsuji
Edit:Masaya Umiyama